□  FOR SALE                           平成14年5月29日



 築20〜25年もすると、住宅の価値はどんどん下がってゼロになってしまう。下手をすると、解体費がかかるからない方がいいなんてマイナス評価になる。更地に土地のみの価格が、売買のときの資産評価である。

 ガラス張りのコンピューターセンターの時代になってきた。コンピューターはまわりの環境、気温、自然光、風などに左右されない、純粋に一定のつくられた室内環境を必要とする。コンピューターセンターの建物は殆んどが外まわりは窓がない建物を設計することが要求され、床は配線配管自由なフリーアクセスフロアのモジュールプランであった。最近は外壁を一般のオフィスのようにガラス張りにして、もう一枚内側に壁をつくってコンピューターの環境を一定に保っている。二重壁だから無駄のような気もするが、コンピューターセンターだけにしか使えないと他の建物の用途に転用できない。いつでも変更できる準備を整えた設計、それだけ建物の附加価値を高めている。

 ‘FOR SALE’。売っているのは住宅である。外国の映画でよく住宅の入口にこの看板が出ているのを目にする。住宅のオーナーが屋根に登って屋根をはりかえたり、ペンキで外壁を塗っていたり、のこぎりで加工して内部の造作を直したりしている。日本では、今住んでいる住宅に「売り出し中」なんて書いてある光景は滅多にない。外国映画の中の住宅は、常に価値を高めようと維持・補修をしている。究極のライフサイクルコストエンジニアリングだ。

 土地の価値のみで資産をはかってきたのが日本。土地の価格もバブル崩壊以降、全国各地で下がり続けてきた。今後も同じ価格であっても、上がり続けることになりそうもない。建築もきちんと附加価値を考えた長寿命化の設計、LCC(ライフサイクルコスト)の概念をどう定着させるかの時がもう始まっている。



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