□  学ぶこと                              平成14年6月7日



 ‘学ぶこと’は‘学び方’を学ぶことである。今はかなり様変わりしたが、10何年か前は建設業界は人手不足で、若い人にいかに魅力ある産業であるか訴え続けてきた。人余りの現在でさえ、地方の中小会社にとってなるほどと思う経歴の人はなかなか見つからない。

 かなり永い間建築の設計教育に携わってきたが、常に云い続けてきたことは、小・中・高と違って教科書はない。段階を踏みながらステップアップをするのでない。何が正しい設計なのかという答えもないということを学生に問いかけて来た。別の先生は設計に対して違ったコメントをするかも知れないが、自分の判断で咀嚼して設計する姿勢が大切なのである。図面化する設計技術だけを習得するなら、図面を画けば画くほど上達する。時代背景の反映として、多くの建築家論がある。建築を設計するのにも設計者によって様々な角度のアプローチがあり、自分なら悩んだ時にこうするという‘学び方’を養うことが‘学ぶ’ことである。

 経営者にとって大事なことは人づくりである。社員1人1人がいかに自分の持っている能力を、10のものを10出せるように出来るかにかかっている。経営者が全部の事を1人でこなせるはずもないし、逆に経営者の指示待ちになって、能力は2ぐらいしか出さなくなってしまう。組織がダイナミズムに動くか否かは、壁にあたった時に‘学び方’を知ってる社員がどれだけ多いかにかかっている。先輩、上司に聞けるか、相談できる友人がいるか、どこの本に書いてあるか、何を調べれば良いか、失敗をできるだけ避けるにはどうしたら良いか、‘学び方’が大切だ。

 なるほどという経歴の人は、今後もおそらく入社してこない。社内においても‘学び方’をきちんと知っている社員は力をつけている。ドリームインキュベーター社長、堀紘一は言っている。(日本経済新聞、5月5日)
『私は「学歴」というものは信用しない。「学歴」の間に「習う」という字を入れた「学習歴」が大事だと思う。』



ご意見、ご感想は ndk-aoyagi@ndk-g.co.jp まで


「森の声」 CONTENTSに戻る