□  コンストラクションマネジメント(CM)                                 平成14年12月9日



 CM方式が単なるコストカッテイングの手法だと理解されると辛いものがある。CM方式についての正しい理解がされぬままにただ安く建設工事が出来上がる手法だという考えが一人歩きしてしまう。CM方式は一言で言えば今までの一括発注方式から分割発注方式の事。分割発注だから無駄を省いた分安く発注できるはず、建設工事の重層構造を取り払う事ができる、CM方式への偏ったイメージだけが一人歩きする。分割発注ならではの問題点はある。建設の仕組みを透明にする事によって正しいコストとプライスを認識できる手法なのである。

 CM方式は、もともと発注者の本質的な利益擁護に主眼を置いた手法であり、ガラス張りにすべてをする事によって見えざる損失を未然に防ぐ手法。効率的、経済的にプロジェクトを推進し予算内のコストで予定工期内に期待される品質でプロジェクトを完成させる作業である。設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種マネジメント業務の全般または一部をコンストラクションマネージャー(CMr)が行うものである。プロセス、コストの透明性、フィービジネス指向―構造改革の一端としてCM方式は受け止められている。

 十年ほど前の1993年でもCM方式は米国建設市場の約35%、25.5兆円規模のプロジェクトにかかわっていることになる。リスクをとらないフィーだけのピュアCM方式、リスクを負うアットリスクCM方式、両方式とも今でも確実に伸び続けている。日本とアメリカの建設工事の大きな相違点は設計と施工の分界点が明確になっている事。日本の建設生産システムは長い間の信頼関係によってつくりあげられてきた合意、ゆるやかな包括的な契約形態となって事業主との間での契約が取り交わされている。総合工事業者(ゼネコン)が請負といわれるように全面的なリスクを背負っている。日本の総合工事業者の施工管理能力は高く、その面だけを見るとCMrの役割を果たしているといえるのかもしれない。請負形式と似ていてもアットリスクCM方式と異なるのは透明性の確保という点で大きく異なっている。

 安易にCM方式でプロジェクトを動かして失敗する例はよくある話。先日も「日経アーキテクチャー」誌に載っていた。部分発注だから工程ごとの発注を繰り返していった結果、何倍にも予算が膨れ上がってしまった公共建築顛末の記事。残ったのは相互の不信感、読んでるだけで辛くなる。CM方式でコストが削減できる、CM方式は透明性への特効薬、CM方式は日本でも簡単に出来る、CMrが全部責任を取ってくれる・・・などとCM方式への偏ったイメージ、CM方式はこういった期待に対してチャンスを残すという言葉に置き換えて考えてみるぐらいの事が大切な事である。長い間培われてきた日本の契約関係の不明確性などもあげられるが、建設業法上の問題点、労働安全衛生法上の問題点、廃棄物処理法上の排出事業者責任の問題点など乗り越えなければならない事は多い。それでも建設の仕組みが透明になる動きだからリスクの存在に目が向く。オープンになったコストとリスクが一体となって正しいプライスが事業主にも国民にも理解される動きであることは間違いない。

                                          (青柳 剛)



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