□  1:2:7                                                 平成15年4月16日


 企業にとって人は大事。新入社員でも起業家精神があればいい。入社して1―2年もすれば経営者と同じ気持ちになって働いてくれればこしたことはない。教育訓練もいらないし企業の組織は一体となって動き出し活気ある企業になることが理想。ところが企業人間になって何年かすると余分なことに口を挟まない、自分の領域だけを守ることに長けてくる「タコツボ社員」、責任のある発言をしないで組織の中をフラフラ泳いでいるだけの「ボウフラ社員」が浮いてくる。全員がいつも起業家精神を持ち続けるのはなかなか難しい。経費圧縮の時代でも歩き方、名刺の出し方、話し方から始まって知識技術を身につける教育訓練が必要となる。

 日本経済新聞(4月6日)の一面の「春秋」欄。経済学者ケインズの門出と今どき信じ難い人材の無駄遣い、花見の新入社員の話。文官試験2位でインド省に入省したケインズの初仕事が雄牛の船積み手配。保身にのみ努める特権官僚の堕落振りに嫌気し、一年半で役所を去っている。後にこの経験が経済学構築の糧になったという。前途有為の青年を腐らせた職場には違いない。それと同じこと。満開の桜の下で真新しい背広の新入社員がブルーシートの真ん中にポツネンと座っている光景。後でやってくる先輩たちの桜の花見の場所取り。一番若い社員だから身体を使った役目も仕方がない。厳しい時代に入社試験を勝ち取ってきたからきっと優秀な人材。それでも入社したての初仕事が花見の場所取り。企業の縦割り、序列の組織に組み込まれていく第1歩。起業家精神は確実に失せていく。やる気のあった優秀な人材を失っていく企業の損失は計り知れない。

 グループ制。民間企業はかなり前から導入しているが最近は行政も導入しだした。縦割り組織だと意思決定が遅くなって組織が硬直化しがち。「変化」に対応できない。要はイメージとしての円卓。上も下もない。グループとなった円卓だから基本的には円卓に就いた人はみんな対等。自由な意見が出せる環境だし自由な意見を対等な立場で発言しなければならないから責任はそれぞれ重くなってくる。一つの問題点の解決、プロジェクトをグループで決定していくから答えは速く出る、動きもプロジェクトごとだから柔軟性に富んでいる。IT環境の整備と共に個が優先、グループ制は終身雇用の変化と一体になってますます広まっていく。

 企業にとって人は大事。全員が起業家精神を持ち続けられれば最高。勘違いしてはならないのは組織はいろんな人の集まりであるという事。「普通の会社では、できる人、並みの人、働かない人の割合がそれぞれ1対2対7だという。7は、しかし、愚者とは限らない。会社員的才能を持たず、あるいは会社世界に必ずしも適応しない人も少なくなくて、彼らは会社とは別の場所に希望を持ち生命力を注いでいる。逆にこの割合でこそ会社はつつがなく回るのであって、全員ができる会社など想像するだに恐ろしい。」(昭和時代回想139頁、関川夏央著)。全員ができる人の集まった会社の筈だと思うから勘違いする。1対2対7の割合をいかに変えられるかからいつも始めなければならない。

                                          (青柳 剛)


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