□ CM(その2)                                                  平成15年7月14日


 中小建設業者の間でCM(コンストラクションマネージメント)方式の話題を出すとたちまちの内に拒絶反応が返ってくる。基本的に今までの請負方式と異なるから受け入れがたい気持ちは理解できる。加えて建設コストが下がっていきそうな気にもなるから余計拒絶する。CM方式について考え出してあちこち勉強会に行くようになって2年以上が経ってきた。当たり前のことかもしれないが建設業界にとってCM方式は一つの新しい潮流であることは確かであること、かといって今までの請負方式が皆無になってしまうほどのビジネスモデルではないと言うことである。大事なのはCM方式の中から学び取れることは建設コストに対して正しいコスト意識が国民の間に広がっていくチャンスが見出せると言うことである。

 CM方式が導入されるようになって行ったとしても、今現在で1%そこそこ、全建設工事の1割は導入されることはないと思っている。数ある選択肢の中でのひとつの発注形態であると思えばいい。全体の建設工事の中で建設会社が担当するマネージメントフィー、管理費だけを入札するCM方式もある。現場でかかる人件費を含めて全建設工事を管理するフィーだけで入札をする。決定した建設会社とその後は工種毎に発注者と値決めをした専門工事会社がコストオンに近いかたちで契約を結んでいく。結果として工事量はフィーで契約した建設会社に戻っていく。利点は発注者にとって工事の中身がコストを中心にして透明になる。建設会社にとってもフィーは減額になることなく一定額が保障されるが、載せられてきた専門工事業者のリスクは背負わなければならない。工期が短縮されればそれだけ建設会社にとって有利な結果をもたらしていく仕組みである。

 従来の請負方式はコストがブラックボックスで曖昧だから誤解を生んでいく。曖昧なものを飲み込んでいるリスクを背負っているんだからコスト高にはなりやすい。使わなかったリスクの積み重ねが最終的な利益を生み出していく仕組みである。どこの工種にどれだけのウエイトで金額配分がされているかを発注者は知りたい。電気、設備を今回の工事ではハイグレードにしたいと思っていても全部がブラックボックスでは発注者の意図はなかなか伝わらない。躯体にはどうしても腕のいい職人に頼んでしっかりしたコンクリートを打ってもらいたいと思っても金額のウエイトの大きな工種にしわ寄せが行ってしまう。発注者の意図と違った建築が出来上がることになる。

 何もかも建設工事の中から曖昧な部分をそぎ落としていけばコストは下がっていく。確かにそうかも知れない。そぎ落とした中から透明になることによって建設会社の技術力の発揮どころ、正しい管理費に目が向いていく。そぎ落とされた隙間を埋めていくのも大変、工場生産と異なり現場生産の刻々と変化する割り切れない特殊な生産性が隙間を埋める作業をつくっていく。高すぎると言われている建設コストを下げるためだけにCM方式があるのではないということ、管理費、リスクフィー、建設コストに対して正しいコスト意識を国民の間に広げていくことが出来る建設生産システムであることだけは確かだ。中小建設会社の経営者の拒絶反応はある意味で正しい、見失ってしまってはならないのは正しい建設コストを社会に問いかける手段の1つとしてCM方式から理解を深めることである。

                                          (青柳 剛)

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