仕掛ける                                                   平成15年9月16日


 「景気は悪い。ほんとに悪い。特に地方はどうしようもない。景気を何とかしてもらわないとどうにもならない。何とかならないんかねえ」、この数年、年中聞かれ続けてきた言葉。誰かが何とかしてくれるのを待っている。待っているだけでは誰も何もしてくれそうにないことにそろそろ気づきだしたのかも知れない。誰かが何かをしてくれれば儲けもの、もうほんとに自分で考えて進んでいくしかないのかも知れない。待っているだけなら確実に業績は落ち込んでいく。自分から行動を起こして仕掛ければ確実に業績は上がっていく。「待ち」から「仕掛ける」へ。それでも仕掛けただけでは直ぐに元に戻ってしまうか、逆に前より落ち込んでいってしまうことの繰り返しからなかなか抜け出せない。

 閉塞感が漂いだしたら真剣に考えたチラシを打ち出す。出来るだけ集中して打ち出す。もちろん懐の具合を考えて打たなければならない。一番簡単な外に向かっての「仕掛け」なのかも知れない。建築を外に向かって売り出す話のチラシだから、ほんとに一時期の盛り上がりに終わってしまいがち。スーパーのチラシのような訳には行かない。顧客が沸いてくる話は絶対にない。社内の閉塞感を少しでも打ち破るためだけぐらいに経営者は考えていれば間違いはない。チラシの仕掛けに需要者も供給者もほんの一時期だけ動かされる。ほんの一時期のチラシを通してのふれあいだから醒めるのも早い。チラシは一時期だけのイベント、本物のふれあいとは異質なもの。仕掛けだけを信じるからその後何にもなくなって、次にやるべきことも見えないからすぐに元に戻ってしまう。

 新しい店舗を作るのも新しい仕掛けのひとつ。新しくて綺麗な店舗に人はやってくる。それでも新しがりの人達がやってきただけだから又いつの間にか新しい店舗から人は居なくなってしまう。移り気の人はすぐに又別の店舗に移り気する。人を増やすのも、新しい血を入れるのも仕掛けることのひとつ。社内の活気は高まっていく。高まった熱気も当たり前の感覚に浸りだすと前と同じ、冷えていく。異業種に進出していく努力は新しい大きな仕掛け、別の分野だから仕掛けるエネルギーは並大抵では終わらない。うまく異業種の分野に進出できれば仕掛けは成功と思っていても異業種でやらなければならないことも今までの業種となんら変わらないことにすぐ気づいていく。別の未知の分野だから掛けたエネルギーになかなか比例しない気持ちも手伝って、いつの間にか大きな仕掛けが色褪せて行ってしまう。新しい仕掛けも長続きしないで終わってしまう。

 「誰かに何とかしてもらわないとどうにもならない」、誰もほんとに何もしてくれない。年間で50兆円も需要と供給のミスマッチがあるから誰も何もしようがないのである。簡単にはこの50兆円のミスマッチは埋められない。いきなり消費意欲が国民の間に沸き起こり、税収まで上がって行く良い循環はそう簡単にはやってこない。かといって「待ち」の姿勢では確実に落ち込んでいく。外に向かって「仕掛ける」こと、一時期かもしれないが「仕掛ける」ことによって上向くことは間違いがない。いったん上向いた仕掛けをいかに落ち込まないで持続していくことが出来るかということになると答えはひとつ、深く掘り下げながら「愚直にコツコツと今のことをやっていく」ことの繰り返しのような気がしてくる。おそらく外れてはいない。

                                          (青柳 剛)

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