ポカリスエットとDAKARA                                         平成15年9月19日


 業界ナンバーワンの企業のビジネスモデルを見ていても何にも参考にならない。マスマーケティングの象徴、コンビニエスストアの話である。もちろん業界ナンバーワンのコンビニエンスストアは半径500メートル以内に店舗を作っていく戦略の身近にあるコンビニエンスストア。コンビニだから便利な小さな店舗の業種、どこも同じと思っていたら、中身が、大袈裟に言えば業態が、みんなそれぞれ違っている。中性化された無機的な店舗の集合体はコンビニエンスストアが出来立てのときの話、生き残りをかけた熾烈な競争の中でそれぞれのコンビニの業態が変わりつつあるのである。

 日販は多いほうが良いに決まっている。一日の売上高が多ければ多いだけ年間を通した売り上げも上がるのは簡単な方程式。年間売上高2兆円を超えるナンバーワンコンビニエンスストアとナンバーツウのコンビニエンスストアが先ず違うのは都会に出店している数の差、東京は売れる。地方は売れない。地方に出店の重点を置いている差がそのまま日販の差となって現れる。日販を競うのでなく利益率がどうなっていくかがひとつの戦略になっていく。売り上げが少なくても効率の良い利益率の高い商品を売っていくことに目が向けられていく。地方だから出来るビジネスモデルのひとつが店の一角に作った北海道のコンビニのうどんコーナー。それまで車の中で食べていたお客がトッピングしながら店の中で食べるコーナーは、人気が高く、粗利も良い。日販を競うよりコンビニ常識はずれの工夫した売り方が客を呼ぶ。

 変化についていきにくいのがコンビニ、数多い店舗で量を売ることを考えてきたから仕方がない。誰でも食べたい弁当は、健康志向、あっさり弁当を食べてみたい。ところが今のコンビニ弁当、揚げ物中心弁当。揚げ物中心の弁当が売られているから仕方なく買って食べている。あっさり弁当が出来ない筈はない。出来ないのは量を売る仕組みが出来上がっているから出来ない。日持ちのする揚げ物中心生産体制が出来上がっている。健康志向、あっさり弁当の生産体制をナンバーツーのコンビニは目指している。塩水で炊いた均一なおにぎりだっていつか飽きてくる。器械におふくろの味を読み込ませた手の圧力でにぎり、海苔もふんわり付いた「ふっくらおにぎり」は、人気の売れ筋商品になっている。

 業界ナンバーワンのコンビニモデルから常に離反することが生き残りをかけた道。ナンバーワン企業がつくったことと同じことをやっていても儲からない。量を売っていくコンビニモデルは、標準化と効率主義。対極にあるのが、個店主義とゆとり、癒し、楽しさを持った文化性重視。平均3分の滞店時間と回転率を追い求めてきたのが今までのやり方。効率を上げることとは違った別のコンビニモデルがある。35坪の店舗面積も理由がある訳ではない。ただなんとなくナンバーワンコンビニの店舗が35坪だったから。大学の中でも病院の中でもホテルの中でも35坪の枠を越えれば出店できる。ナンバーワン企業、トップ企業だけを追いかけていてもただコピーするだけ。考えることが抜けていく。スポーツ飲料のトップ、大塚製薬の「ポカリスエット」を追いかけたキリンビバレッジのスポーツ飲料「スピード」、アサヒ飲料のスポーツ飲料「スイッチ」はなかなか見当たらなくても、似て非なるもの、サントリーのカラダバランス飲料「DAKARA」は、「ポカリスエット」から離れた距離で売れ続けている。

                                          (青柳 剛)

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