太るために生きている                                            平成16年2月12日


 人は太るために生きている。風邪をひきそう、そして体力をつけなければと自分に言い聞かせてどんどん食べていく。太ったって風邪をひいて寝込むよりましだからと言い聞かせて食べ続ける。有酸素運動もしっかりやったし、筋トレもやった。カロリーはかなり消化した。一食分は間違いなく消化した。食べても大丈夫だからと自分に言い聞かせて食べ続ける。食べて食事がうまいと感じるのは若くて健康な証拠、若さと健康を維持するには食べ続けなければならない。食べられなくなったらおしまい、と言い続けながら食べる。朝だから、昼だから、夜だから、決まりだからと言って食べ続ける。人は、体もそして心も、太るために生きている。

 そうは言っても食べすぎを続けていれば身体は赤信号を灯しだす。食べすぎが原因の病気は、糖尿病から始まって痛風、高血圧、脂肪肝、肥満など世に言う生活習慣病。生活習慣病が引き金になっていろんな病気にかかりだす。食べすぎを抑制する作用は人間の体には持ち合わせていない。食べすぎた高血糖値を下げる役割を持っているのはインシュリンだけ。それに反して腹が空いてるときには体は敏感に反応する。低血糖を上昇させるためには、アドレナリン、副腎皮質ホルモンを始めいろんなホルモンが働き出す。空腹には人間の体は容易に対応できても食べすぎには殆ど対応できない。だから、食べすぎ、赤信号としての病気から抜け出せなくなってしまう。

 歳を重ね、もちろんいろんな経験をするのは良い事。別の見方をすれば下手な経験と妥協の繰り返しはただアカがたまっていくだけ、脂肪が付いて心が太っているのに気づかない。今までそれなりに仕事をこなしてきた実績が邪魔をする。いつまでも自分の考えと経験が唯一絶対と思い込んでしまう。経験を重ねた人間は、調整能力ばかり付いて問題を浮き彫りにすることなく行動する。問題先送り、検討しているうちに月日が経っていく。去年ベストセラーになった「ばかの壁」が見事に形成されている。そして狭い地域社会の中で生きていれば人間関係も複雑、妙な足の引っ張り合いは煩わしいマイナスのエネルギーが心の中に積み重ねられていく。何の役にも立たないマイナスのエネルギーは心の澱になる。体が太るのと同じ、歳を重ねれば間違いなく心に脂肪、太っていく。

 人は太るために生きている。ダイエットの折込チラシが入っていたりダイエット本が売れるのも人が太るために生きている事の裏返し。太るのを抑制する機能は少ない。ほおっておけばとんでもない事になる。体も心も脂肪が付いていく。いつまで経っても若いときと同じ背広を着ることが出来るぐらいの体型で居たいし、どんな事にも敏感に反応する心は持ち続けていたい。だから週何回かの筋トレジムは、もう何年も欠かせないし、本は手当たり次第に読み続けてきた。ウォーキングも欠かせないし、しがらみのない新鮮な関係を求めて知らないところに旅行もしたくなる。太るために生きてきた脂肪はきっと消えていく。研ぎ澄まされた自分と正面から向き合っていたい。


                                          (青柳 剛)

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