□ 帳尻合わせ                                                                    平成21年4月6日


 すべて、結局は「帳尻合わせ」である。去年の暮れの陽気は、平年どおりに寒かった。今年こそは冬らしい冬がやってくるのかと思っていた。暮れの押し迫った頃には、雪も本格的に降り出していた。四季折々だから、季節にあった陽気になると落ち着ける、寒いときは寒いのがいい。そう思っていたら、年明けからおかしくなりだした。雪の降る量はどんどん減っていく。2月になったら、雪どころかポカポカ陽気の日が続きだした。4月、いや、5月の末の陽気の日まであった。こうなってくると、3月の半ばには桜が咲いてしまうんじゃないかとも思い始めていた。やはり「地球温暖化の影響かなあ?」とも思っていたのである。それが、3月に入ったら急に寒くなりだした。雪は毎日チラチラしている。月末には本格的な雪が降った日もあった。こんな日々が続いているうちに、4月になり、桜の花は3月に咲くこともなく、例年通り4月の中旬に咲くことになった。結局は、陽気でさえ、帳尻合わせの結果になったのである。

 変えようもない陽気が帳尻合わせならば、変えることのできる数字の世界の経済はもっと帳尻合わせだ。日本の自動車産業、1兆円の利益だと言っていたら、あっという間に2兆円、いやそれどころかそれを越す勢いになっていた。この先どうなっていくのかと思っていたら、去年のいきなりのアメリカの金融不況でたちまち赤字になりそうになってきた。マスコミからは派遣切りパッシングにまであっている。去年の今頃とは大違いだ。そのほかにも、何年か前の飛ぶ鳥を落とす勢いだった投資ファンド系の若い経営者、それこそ選挙に立候補して宇宙旅行まで熱く語っていたのに塀の中にまで落ちてしまった。新しいビジネスモデルの時代の寵児、うまくいきそうだったのに、マイナスの風を直撃することになってしまった。こんな風に考えてみると、どこの分野も同じことなのかもしれない、いい事と悪いことがプラスマイナスゼロぐらいのところで動いていると思えばきっと理解できる。最近は、アメリカの住宅需要も少し前向きになってきたというし、車もエコカーは売れ出した。長い目で見れば、そのうちまたマイナスの分を取り返すときが必ずやってくる。

 経済の次は政治の世界、この世界も一言で言ってしまえば、帳尻合わせというか浮き沈みが激しい。常に敵失が転がり込むようにやってくる。民主党に政権が移行しそうな雰囲気になったら、3月の4日から一気に流れは変わってしまった。民主党の支持率はどんどん下がりだしている。4年前の郵政解散選挙にまで遡れば自民党の圧勝、その後はバンソウコウ・年金問題等で自民党に逆風が吹き荒れ、参議院選では与野党逆転にまでなってしまった。首相が交代するたびに支持率が上がると思っても、結局は下がり続けてきたのである。そのうえ、首相の演説の漢字の読み間違いから始まってマイナスの面がドンドン報道されてきたから支持率はとんでもなく下がり続けていたのである。それがあっという間に風向きは変わりだした。二大政党制だからどっちに転ぶかの揺れ返しになるが、どうも政治の流れももう少し長いスパンで見てみれば、結果としてはうまく帳尻合わせになりそうな気配になってきたのである。

 地球温暖化の所為で地球の温度も徐々に上がりだしているが、それこそ何億万年もの地球の歴史から見ればほんの一時期の現象、そのうち帳尻合わせで元に戻るときが来るのかもしれない。いや、温暖化どころか地球が冷えるときだってあるかもしれない。地球が熱くなり続けることなんてあり得ないような気がする。引退かと思っていた大相撲朝青龍の先場所はとてつもなく強かったが、今場所はうまく帳尻が合って白鵬が全勝優勝をしたのである。勝ち負けの世界こそ帳尻合わせがうまく機能し、ファンは納得する。いよいよ新年度が始まった、経営もうまくいきそうだと思って油断をしていると、落とし穴があるし、その又、逆もある。1年間が終わってみなければ分からない、それでも何とかどこかで帳尻合わせになるんじゃないかと思えるから小さな会社でも経営する意欲がわいてくる。後は長い人生のしまい方、いい事も悪いこともいつかは帳尻合わせ、悲しいことはいつか消えていくし楽しかったことはいつまでも忘れない、そう思うから精一杯生きていられるのである。「帳尻合わせ」の桜前線、そんなに狂わないで到達しだしたのである。(青柳 剛)

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