□女性の視点からの職場・環境改善                                             平成25年10月21日


 9月の建設業労働災害防止推進月間にちなんで県内一斉に女性・「環境すみずみパトロール」隊が現場を回りだした。太田支部を皮切りに桐生、渋川、高崎、沼田と続き、11月にかけて全支部でスタートする。102名の「女性の視点」が現場に注がれる。本部で準備をしたのは協会のロゴ入りの白いジャンパーとピンクに染め抜かれた襷それに点検チェックシート、統一のヘルメットやピンクの作業着を新調しながら支部独自の工夫を凝らしている。廻っている女性は技術者に限らない、普段建設会社で総務関係の仕事に従事し、工事現場に行ったことがない人が大部分だ。現場担当者には気づかない、安全パトロールとも一味違う、女性ならではの現場・職場の改善点は沢山ありそうだ。

 何の事業でも大きく展開するには、小さなことから始めること。モデルがあれば真似をしやすく、分かりやすい。きっかけは群馬労働局の安全担当官の一言、「労働災害が頻発している、特に建設産業。何かイメージを変えなければ・・・」と言われて、「数年前から自社で取り組んでいる女性パトロールを団体活動にまで展開できないだろうか?」と思い立ったのが年明けだった。身近な支部の人たちには、こういった動き方は理解されやすい。1月末の寒い中、沼田支部での15名の女性による「環境すみずみパトロール」隊の結成となった。俄か仕立ての結成になったが、市長並びに行政の人たちも参加し、女性ならではの柔らかさを演出した出発式となり、地元テレビ局などマスコミ各社による反響は大きかった。

 「厳しい時こそ考える」。厳しい状態を保ちながら、仕掛け続けられるかが求められるが、なかなか難しい。事業量が下げ止まり、設計労務単価引き上げなど前向きの動きが出だすと業界の活動は緩くなる。活動自体もどんどん内向きになる。「国、県などの自治体とのやり取りだけで事足りたような気になってしまう。エンドユーザーである国民不在の状態になりがち」、そう思って群馬県建設業協会では今年度は目標を定めた行動指針・「3本の矢」に加えて、「女性、若者、IT、環境」のコンテンツに基づいて活動をすることを発表した。ようやく順風が吹き出しそうな時、業界自らも風を巻き起こすための4つのコンテンツである。

 企業のモデルを団体向けに変えながらひとつの支部でスタートさせ、県内全域に展開した女性・「環境すみずみパトロール」、「ストレスのかからない取り組みを」と伝えたが、初めての試みということもあって立ち上がるのには時間もかかる。「事業量の確保、設計単価の引き上げ」などと違って、すぐに答えが出そうもない活動を仕掛けるのは難しい。目先のことに終始するだけでは潮目はあっという間に引いていく。それでも、参加した女性に聞いてみると「初めて現場に行き大変さが分かった、私たちも少しでも手伝えることがあれば・・・」などと前向きの答えが返ってくる。「業界も変わりだした」というメッセージを発信し続けなければ「魅力ある建設産業」へと認知される筈もない、そう、「女性の力」を活かした改善活動もそのひとつなのである。(建設通信新聞 10月21日)


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