□  見積もり                            平成14年5月15日



 ‘建設コスト’。建物の基礎から始まって建物本体、電気、空調・水・設備工事の数量をカウントするのが積算であり、積算に単価を値入れすることによって見積が出来上がる。製造業の原価と大きく異なるところは、1つ1つつくり上げる現場生産であるために、過去のデータをメンテナンスしながら、各社ごとの単価ファイルを用いて価格が決定される。

 ‘部位別見積’。建物の床、壁、天井、外壁、屋根…といった部位別に数量を計算して値段を入れていく。建物は着工までに企画、基本計画、基本設計、そして実施設計へと移るのが通常の流れであるが、建物の骨組みである躯体以外は、殆んど、基本設計の段階までは、部位別積算で常に値入れが、コスト管理が行われる。施主との間で資金計画に基づいた設計変更の対応がし易い。外壁のタイル貼りを吹付け仕様に変更したらいくらとか、床の仕上げを変えたらどうなるか。リアルタイムにコストと連動してくる。設計対応が楽な積算である。‘工種別見積’。実施設計の段階で工種別の見積方式に入れ替わる。われわれ建設会社が作成する見積もこの方式。仮設工事、土工事、コンクリート工事、型枠工事、木工事、内装工事、建具工事…といった工種別の見積方式。施主が受け取る見積書であるが、実は建設会社主体の見積方式、要は建設会社の予算管理、下請に発注しやすい見積方式である。見積書がそのまま自動的に土を掘る会社、内装を担当する会社との値交渉に入り易いようにつくられている。工種別というか、業種別の見積である。

 ‘BQ内訳書’、Bill of Quantity(数量の書類)。日本の建築工事、特に官庁工事においては数量が手渡される場合が多いが、あくまでも「参考数量」。大方設計の初期段階の数量が入ってる場合が多くあまりあてにならない。きちんと建設会社の側で数量をカウントすることが要求される。どこの大手建設会社も積算はアウトソーシング(外注)が基本。200円〜300円/u当りかかる。高層ビルなどになると、10社の価格競争で、建物面積×200円〜300円×10社となり、ここで莫大な費用がでていくことになる。各社の数量はまちまちで、多すぎたり少なかったりした結果として、値入れで高い、安いがでるのは勿論だが、これは本来の価格競争とずれがある。建築工事でも海外では殆んど「指定された数量」―BQ内訳書が提示され、殆んど単価契約に近く、常にコストの増減と連動する。今の状況では日本では10社同じ数量を提出する環境にない。同じBQでの価格競争が明快だ。

 30年間にわたって使われてきた見積方式。普段、当たり前のことと思って作業している日常の業務、施主の側に立ったり、見積する側に立ったり、別の視点からみてみると、違った姿が見えてくる。ずっとやってきたやり方も実は、時代の変化とともにそうでなかったと気付き、少しずつだが確実に変化してくるのかも知れない。



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