□  模型                                平成14年5月28日



 模型を手軽にすばやく作れなければ一人前の設計者でない、と教えられてきた。住宅を設計するのにも3つぐらいの模型が出来なければならない。パソコンの3Dソフトで即ぐに外観も内部までもが見ることが出来る。最近は殆んど模型を作らなくなってしまった。

 建築の模型にはガラスケースに入った完成模型もあるが、大事なのは施主との打合せの中で設計をしながら即ぐかたちにして、設計者が確認する作業である。平面の図面だけで考えていると、設計の幅は拡がらない。スチレンボードで簡単に出来上がった模型をカッターナイフで切り落としたり、穴をあけたりして、体で覚えながらかたちは決まっていく。最初のスケッチに入る前に油土をこねながら考える建築家もいる。油土は全く自由なかたちが可能だ。既製のかたちにとらわれないし、正しいスケール感も表現できる。

 建築を説明する手段として透視図もある。看板にあるような説明用の透視図もあるが、鉛筆のフリーハンドのスケッチから、具体的にきめ細かく表現される透視図がある。本来、模型と透視図で両方で確認しあうのがいい。透視図は設計者のイメージを雰囲気で伝えることが出来る。デジタルのパソコンの透視図は画一的な説明図で終わってしまう。パソコンで立ち上がった透視図を下地にして、訴えたい空間を強調・デフォルメして描く建築家が出て来た。

 近代建築のル・コルビジュ、ミース・ファンデルローエと並んだ世界の3大巨匠建築家、ヘルシンキのアルヴァ・アアルト(1898−1976)のアトリエを数年前訪れた。アトリエ中、原寸大の紙で作られた模型とか、石膏の模型とか、本当に所狭しと置かれていた。先日久し振りに模型作りをしている設計事務所で打合せを行った。これから施工に入る訳だが、確かなデザインの建築を精一杯つくりあげようと思っている。



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