□  3日間の上棟                           平成14年6月3日



 建築をつくり上げる行為は、地域の人たちにとって非日常的な行為であるが故に、社会的なつながりの核として機能する。

 ‘村の集会場’の落成式に行って来た。まとまりのある46戸の地域の集会場の落成なもので、和気あいあいと終了した。前の晩から準備していた生活改善グループの人たちの、食べ切れない程の手作りの料理。全戸出席した中でのお祝いだ。雪のちらつく寒い中での地鎮祭、上棟式には子供たちも多勢集まり、屋根に登って餅投げまで行った。仕事の始まりから引き渡しまでずっとお付き合いをさせてもらったが、こんな雰囲気を味わった事は最近あまりない。玄関脇の溜りの空間には、地域の守り神、鎮守の森のケヤキを輪切りにしてつくり上げた大きなテーブルがしつらえてある。みんなで総出で皮むきをした丸柱が建っている、地域の人たちの魂の入った集会場だ。

 ‘チルチンびと’。専門家と一般向けの中間の建築雑誌が面白い。古民家特集があったり、古材再生ネットワークが載っている。ほんものの、天然の手作りの建築、家具の紹介誌だ。自分の住んでいる地域でも、大きな茅ぶき屋根の民家がまだ残っている。大きな屋根の架構をつくるために、技術的な必要性から柱・梁が複雑に組み合わさり、大きくなるのはやむを得ない。上棟までが基本的に大工の棟梁の仕事、現実に上棟式が棟梁送りといわれる地方もある。地域の人たちが皆で参加して、民家を作り上げていく。民家を手伝ってくれた地域の人たちに振る舞いをするのに、3日間必要。そのために上棟にわざわざ3日かける、柱・梁架構が大げさになったのはあまり知られていない。

 ‘村の集会場’づくりは地域の人たちにとって非日常的な作業。地域の人たちが本当に喜んでいる。心底から伝わってきた感謝の気持ちは、大事にしなければならない。人間関係が稀薄になったといっても、この地域ではまだまだ共同体のつながりはしっかりと生きている。

  



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