□  VE                                       平成14年8月6日



 積算はやってるけどコストマネージメントは忘れ去られてきたのが現実。コストマネジメントの大切な手法、‘VE(ヴァリューエンジニアリング)’。建築の外壁に大理石を使っていたものをただ単にタイル、吹付けに変えただけでは‘VE’と言えない。‘VE’とは、多くの専門的な立場から要求される機能を分析し、LCCも考えた上で最も低いコストによって機能を実現するための組織的な努力である。

 VALUE(価値)分析、価値を上げる考え方には4通りある。@電卓。コストは毎年下がり続けて計算機能は一定。A洗濯機。リモコンなど機能がどんどん上がり続けてコストはあまり変わらない。Bパソコン。コストは下がり、機能は向上していく。C機能が大幅に上がりコストが少しずつ上がる。要はV=F/C、Vを高めるためにF(機能)を一定か上げること、C(コスト)は分母だから下げるか上げ幅を小さくすることによってV(価値)を高めるのが基本的考え方。過剰設計は別にして、FとCを下げる、グレードを落としてコストを下げる方式は原則VEに認められない。公共発注体における財政難、公共工事コスト縮減、投資効果を高める…流れの中でVE成果は確実に上がってきている。2008年までに3割削減、過去3年間で7300億1割の削減効果が上がったと云われている。

 ‘VE’は基本計画、基本設計段階、いわゆる川上にいけばいく程効果は大きくなる。設計VEは重要なポイントになる。設計が20%進んだ段階でコストの大半は決まってしまう―パレートの法則。冬季オリンピックの開催地、アメリカユタ州。一定額以上の規模の工事は殆んど‘VE’手法がとられる。景気のいい時代にどんどんつくられた施設のストックのメンテナンスが、財政を圧迫しだしたことが大きな要因。ソルトレークシティ郊外のアルコール飲料倉庫のプロジェクトの‘VE’実施結果は有名だ。設計が15%進んだ段階で‘VE’が検討され、ブレーンストーミングの中で集約された提案は107にのぼったといわれている。矩形の倉庫が平面的に横長の倉庫に変えられ、倉庫内にダイレクトに貨物用の線路が引き込まれるまでの自由な発想の転換、価値の向上を考えた‘VE’(日経アーキテクチュア 92.5/11号)。

 外壁がコストオーバーになったら、石張りをいきなりタイル、吹付けに変更してしまう。その建物に要求される外壁の機能は何か、雨露を防ぐには、防音はどこまでか、風に対しては…、機能を変えずにコストダウンをはかる姿勢。査定をしてネゴシエーションでコストダウン、サブコンに一気にしわ寄せがいく。‘VE’はムダを省き、価値を上げる手法である。



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