□  建築計画を選んだ理由(わけ)                            平成14年8月8日



 今でもはっきり覚えている。暑い最中の30数年前の夏の御茶ノ水、駿河台下の出来たての本屋「書泉ブックマート」の2階階段コーナーあたり。クーラーが効いていて気持ちが良い。三一書房の「現代日本建築家全集」のハードカバーの本を何冊か手にして、貪るようにして読みふけり、白黒の建築写真に感激して建築計画、建築デザインを選択する事を決めた日のことを。

 姉弟は小さい時から自分たちの進む方向は決まっていた。建設会社の長男で生れたから、何となく建築か土木でもとおぼろげにずーっと考えてはいた。なかなか具体的に自分の中ではっきり決められずに過ごしてきたのが高校時代まで。何を学んでいいか分らずに、地方高校生にありがちなお決まりの予備校生活。理数系の分野はしっかり積み上げてこないと急に伸びることはない。ものを書いたり読んだり文系の分野ばかりが成果としてあがってくる。数学は苦手だから文学部でもいこうかと悶々としている時に出会ったのが「書泉ブックマート」の光景。建築デザインは理系の中で限りなく文系に近い芸術分野、夢中で「デッサン」の勉強を始めたのである。

 建築には計画、構造、設備、材料・施工と4つの専攻がある。「書泉ブックマート」の光景があるから、1年生の時から生活はすべて建築計画、デザインに向かってまっしぐら。建設会社と関係があるからといって材料・施工には見向きもしない。暇があれば先輩の図面の手伝いをしながら夜中まで建築デザイン論をたたかわし、有名建築を体験することにあけくれた。弁護士にも民事、刑事から始まって専門は細分化され、税理士だって専門は特化されている。内科の医者に外科の手術を持ち込まないように、建築の世界でも設計は構造、設備ましてや材料・施工の分野の人に直接頼む人はいない仕組みの筈である。それほど建築の分野でも専攻別にひらきがある。

 三一書房の「現代日本建築家全集」を目にした時からのめりこんだ建築計画、デザインの世界。そういえば人はどこかに旅行に行くにも、街並みを見たり、建築を見たりするのに終始する。建築のデザインは生活スタイルの一部である。建築デザインは住むを考え、風景をつくりあげる。デザイン力も必要だが、時代背景、思想、生産技術、生活、言葉…すべてに敏感に反応しなければならない。ずーっと建築計画・デザインの目から考え続けてきた。今は施工を主とした建設会社の経営者である。

 
   駿河台下交差点

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