□  都心回帰                                   平成14年8月23日



 「田町」の建築学会の建物だったり、その周辺の建物だったから、昨年の9月から先日までの年45回の勉強会、1日も休むことがなく参加することが出来た。全国各地から毎週集まってくる訳だから、新幹線の東京駅からも羽田空港からも近接していることによって毎年の勉強会が成り立っている。

 手狭になったキャンパスの老朽化に伴って、自然環境の整った八王子郊外などへ多くの大学が広大なキャンパスを求めて移動していったのが何年か前まで。最近は東京駅八重洲周辺に、大学院コース、ビジネススクールなど各大学の集積が始まっている。交通アクセスの便利さは必要不可欠だが、「スピード」と「変化」、社会人となった人達がそれまで学んできた教育では今の経済の仕組みについていけない。再教育を受けるスペースと機会が必要なのである。

 ‘お茶の水明治大学’。大学の建築では珍しいエスカレーターつきの建築だが、駅から駿河台下の交差点沿いのそれまでの歴史ある旧い建築を、高層に建替えた省エネ、環境に配慮した建築。別の見方をすれば、郊外に他の大学が移転をするのにのり遅れた感がしていたのに、学生でにぎやかなキャンパス界隈、今の時代の流れにのったかたちになっている。都市の空洞化に大きな影響をもたらすのは大学の移転。大学が移転してしまえば、本屋から始まって飲食店、喫茶店、楽器店…住居、それに伴って人までも移動してしまう。産業界、公的機関と一体となった大学の「知」の在り方が問われている。

 IT化が進めば、どんなところにいても情報の共有化が達せられ、都市の集中化が緩和され分散化されると世界中で考えられていた。日本だけは別格。デジタルな情報量が増えれば増える程、FACE TO FACEの欲求が高まっていく。「24時間都市」。時代の変化に対応した情報を求めて、交通アクセスの便利な、高度な情報が集積された「都心回帰」へと一層拍車がかかっていく。

  

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