□  銀行との付き合い方                                        平成14年11月11日



 銀行融資の基本は担保(物的、人的)半分、あとは信用できる人物であるかどうかであった。金融システム不安、不良債権処理の加速、公的資金の注入、銀行の国有化、経営責任の明確化。金融のルールを根本的に変える路線に政策が、経済の仕組みが大きく揺れ動いている。51社、30社リストが週刊誌、新聞などで取り沙汰され、銀行も自己防衛策から貸し渋り、貸し剥がしの状況は身近なものとなりつつある。大半の企業はバランスシート(金銭貸借対照表)をきれいにするために借金返済。デフレスパイラルは止まらない。会社四季報を見れば、かなり多くの大企業が資本、負債共に圧縮している。銀行などから借入をすることによって企業の経営を行っていた今までの間接金融のシステムから、マーケットから直接資金を調達する直接金融への動き。それでも中小企業、建築関係者にとって銀行との付き合い方は大事、銀行の融資の考え方は的確に把握していかなければならない。

 ‘アパート・ビルローン’。事業企画の段階で必要になってくるのが銀行の‘アパート・ビルローン’に対する取組姿勢。昭和50年代の後半、土地有効利用のニーズの拡大、そしてオイルショック後、企業融資の低迷の中での一般融資の延長線上として位置づけられた‘創設期’。昭和60年代から平成2年まで、地価高騰による相続対策、投資的な賃貸アパートやテナントビル取得の需要増、各銀行ともに定型化、商品化した‘拡大期’。融資期間は35年まで、建築工法による融資期間の制限も廃止。平成3年から平成5年頃、バブル崩壊に伴った問題案件が激増、銀行はアパート・ビルローンの取組みには消極的となった‘停滞期’。平成6年以降、企業は間接金融から直接金融(債権等の発行)へと切り替え、企業の財務体質強化による借入金の圧縮の波の中で、貸出分野が低採算化。銀行は経営方針を企業融資から、個人ローン重視プライベートバイキングへ切り替える‘安定期’へと向かう。銀行間の適用利率の引下げ競争、固定金利指定型ローンの登場となり、アパート・ビルローンに対する今までの銀行の一連の取組の流れとなっている。

 ‘人様のお金を使って融資、必ず返して頂くこと’が銀行融資の大前提。銀行融資には5つの基本原則がある。@安全性の原則。貸出資産の健全性の確保、必ず契約どおりに回収できるか、不良債権化しないかどうかの安全性。A収益性の原則。銀行もビジネス、採算を確保しなければならない、効率的な運用ができているかどうかB公共性の原則。ビジネスとしてもうかればどんな風に金を貸しても良い訳でなく、公共的な使命、社会的な立場が銀行にある。C成長性の原則。融資した相手が個人、法人であっても相手の育成、発展に寄付できるかどうか、相手方の発展とともに銀行も発展していかなければならない。D流動性の原則。融資をしたら資金は固定化、資金使途に応じた貸出の運営をしていかなければならない。

 ‘銀行との付き合い方’。基本的には‘ギブアンドテイク’により成り立つ世界。銀行の審査は、我々建築関係者の良心的な「常識」と変わりはない。バブル時の学習効果は反映しなければならない。事業企画の段階でつくり上げる事業収支もいかに事業主のためになった「良い提案」をしていくかにかかっている。建築関係者から見た「付き合いたい」銀行は、建築案件を持ち込んでくれる銀行であり、逆に持ち込んだ融資案件に対して、貸出条件の魅力、融資は勿論だが貸出案件の諾否がスピーディーな銀行が良い。銀行からみた「付き合いたい」建築関係者は案件情報を多く持ち込んでくれる建築関係者が良いという‘ギブアンドテイク’の世界となる。銀行融資の基本、担保半分、人物半分から、融資する相手が永く付き合える信頼できる人物かどうか、そして事業を担当する建設会社にとっても単なるデーターバンクの信用調査だけでなく、業界、地元での風評の良し悪し、信頼できる会社かどうかのウエイトは益々高まっていく。

                                                         (青柳 剛)



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