□  ファシリティマネジメント(FM)                                    平成14年11月27日



 「社長室なんかいらない」(森の声7月25日)。FMに要求される究極のかたちかも知れない。そのまま日本語に訳せば「施設管理」。FMは新しい経営管理手法、アメリカで家具メーカー、ハーマンミラー社が母体となってFM研究機関が出来たのが始まりといわれている。日本でも1980年代から注目され、今では日本ファシリテイマネジメント協会なども出来、積極的な活動が展開されている。FMは幅が広く、あらゆるジャンルの仕事が混在一体の状態になる中で、明確にするのが難しい。企業、団体の組織が使用しているハードウエア及び地球全体にまで拡げた環境を経営戦略的な視点から統合的に企画、管理、活用する経営管理活動。FMの目指す効果は最小のお金で最大の効果を求める。情報化にいかに対応していくか、いかに省エネの無駄のない施設を保有施設全般に亘って見直していくか、もう少し進めて考えると、変化に対応した最適な効率を求めて別の施設に移転する事さえも戦略として練ることがFMの具体的な業務として挙げられる。

 「FM業務と目標サイクル」。FMサービス提供者として、事業主サイド、設計者とどういったパートナーシップを保てるかは勿論、ファシリテイを中心にした先取り予防的な経営戦略的な視点が求められる。今までの伝統的な施設管理は、今ある施設の維持保全、営繕に象徴されるように現場管理的な対処的手法。企業ある限り、組織がある限りライフサイクルを踏まえた上で現在と将来に亘ってすべての固定資産にFM標準業務サイクルを回していく。FMもPDCA(PLAN・DO・CHECK・ACTION)のまわす仕掛けのサイクルが基本、途切れることなく効果的な運用が求められる。FM目標管理サイクルは「人、組織体、社会」−「プロジェクト管理」−「運営維持」−「評価」と、FM供給サイクル、FM品質サイクル、FM財務サイクルと一体となって動く。施設全体を通して最適な状態に保つために、不動産・建築は勿論、経営管理、会計・財務、経営科学、情報科学、人間工学など広範な分野の知識・技術をベースに施設の状態把握、分析、評価、最適化のための企画を行う計画的な作業となる。

 「FMの戦略と計画」。経営戦略とFM業務は一体。経営戦略にもとづいたFM基本理念の設定、FMの目的・目標、そして長期的、総合的にファシリテイの有効な方針や施策を企画立案し、ファシリテイの側面から経営幹部の意思決定を支援して、経営に貢献させる事が目的。FMに影響する社会状況は、的確に把握しておかなければならない。不況、情報化、地球環境保全、金融制度の変化、少子高齢化、女性パワー、ワークスタイル・ライフスタイルの変化、組織のフラット化・・・・。そして施設に求められる事は、スペースは小さく、コストは小さく、品質柔軟性は高くである。どのような資産を所有しているか、保有施設の状態、資産の現状は将来の変化に適合しているか、資産コストの低減の可能性はないか、常に社会の変化とともにコストミニマム、エフェクトマキシムの計画を策定する事である。

 昨年9月11日同時多発テロが起きた途端にアメリカの企業が直ぐに大規模なリストラを実行したのは有名な話。つねに社会情勢の変化とともに企業も変化していく。FMrの資格制度も定着しつつある。「ファシリテイの有益な戦略(方針・施策)提案」、「適正なプロジェクトの実行」、「地道でかつ創意工夫の運営維持」、FM業務の基本の3本柱。背景にはバランスを保ったファシリテイの品質、財務そして供給がある。現場管理的な従来の伝統的な施設管理から脱却したFM,先取り改革追求型の戦略手法である。「人」、「もの」、「金」、「情報」に加えて「ファシリテイ」を第五の経営資源の中心に据えたときにFM業務は始めて有効な経営戦略、コアビジネスとなる。大事な経営資源は「人」、「人」のリストラをする前に、厳しい時代だから資本全体圧縮は時の流れ、ますますFM業務に目が向けられていく。FMは新時代のダイナミックなシステマテックな経営管理手段、「社長室なんかいらない」、経営トップの取り組み姿勢いかんにかかっている。

                                          (青柳 剛)



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