高い駅弁                                                    平成16年1月23日


 景気は上向いてきた。株価も1万1000円台近辺、1部の取り残された産業を除いて確実に上向いてきたのである。それでも本当の意味での景気回復かどうか国民の不安感は拭いきれない。もちろん財布の紐は硬くなっているし消費意欲も旺盛でない。無駄は省きたいし余分な出費は出来るだけ抑えたいのが本音である。こんな状況の中で動き出しているのが顧客の求めているのが価格だけの判断でないと言う事だけは間違いがない。少しぐらい高くても確実に安心できるもの、信頼できるもの、良質なものを求めだしている動きは身近な事からも体験できる。数年前の安い価格だけに走った顧客志向からの脱却だ。

 3800円もするこだわり弁当は数量限定と言う戦略もあってすぐに売り切れになってしまう。東京駅で買う駅弁、3800円の駅弁を買うほどでなくても日常買い求める駅弁でも気にしながら見ていると高い価格の駅弁から間違いなく売れている。夜になって残っているのは本当に安い価格の駅弁だけ。別にお客の懐が裕福で有り余っているとは決して思えないが安い価格の弁当の味は確かにあまり好くない。セットで入ってくる安い輸入弁当は温かくてもただ空腹を癒すだけの弁当。千円ちょっと出した駅弁のほうが味は好いし、開いてみた見た目も確実に華やかでしっかりしている。たかが駅弁と言っても一生のうちで大事な一日の食事と考えれば、お客は少しぐらい高くても信頼できる駅弁を求めているのである。

 住宅ローン減税の駆け込み需要ということもあるが住宅展示場に訪れる人の数は増えだしている。特に新年になってからの伸びが目立ちだした。それも大手ハウスメーカーの展示場来場者が増えている。昨年に比較して4割増なんてメーカーもあると聞いている。それも新規のお客が増えている。ましてや短い期間に繰り返してやってくる。お客が増えたメーカーの名前を調べてみると大手の全国規模のハウスメーカーが大半、決して今まで安売り価格で勝負してこなかったメーカーである。営業戦略が上手だったと言ってしまえばそれまでだが名前の売れた信頼できそうなメーカーをお客が選びたがっている行動の現われだと思っていてもそう外れてはいない気がする。価格以外のものをお客が求めだした動きである事は間違いがない。

 安売りで勝負といってマイナスのスパイラルに落ち込んで淘汰されていった企業の例を挙げればきりがない。顧客の動向は変わりだしている。食事ぐらいは贅沢でなくても美味しい信頼できる食事をしたい気持ちは素直な感情だし、それなりのお金を出して一生に一度の家をつくるんなら信頼できる人に頼みたいのはもっともな話。お客が買うもの、欲しいものをきちんと選ぶ時代になってきた。後は供給する側がきちんと信頼されて、それに見合ったものを提供できる仕組みが出来るかどうかにかかっている。景気が上向きだしたと言っても今のところ取り残されそうなのが保護され続けてきた体質の農業と地方の建設業、お客に選ばれるつくり方、すぐにでも顔の見える産業としての答えを出していかなければならない。


                                          (青柳 剛)

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