□ 痛い年末                                                                    平成19年12月10日


 しばらく罹らなかったのに「痛風」になった。「痛風」だけが、今のところ悩みの種だ。野菜をしっかり食べて、嫌いな食べ物はあまりないから風邪を引くことも殆どないし、血圧も正常値より低めの状態が続いている。最近は、嫌いだった茹でた人参まで食べるようになった。この歳になると何かしらの薬を飲んでいる仲間が多いが、薬は飲まない、飲まなくてもいい状態の健康状態になっている。もちろん健康診断で指摘されるのは尿酸値が高めと体重が多めだけである。ところが高い尿酸値と多めの体重こそじわじわ身体に効いてくるから何とかしなくてはならない。それでも、運動をしだしてから健康の数値はあっという間に変わりだした。特に肝機能の値はいつもひと桁か、多くてもふた桁の前半である。体重がそんなに変わらなくても内臓脂肪が減ったのが分かる。肉は滅多に食べないし、アルコールも恒常的に飲みすぎるわけではない、どちらかといえば野菜と魚中心のさっぱりした食生活なのに「痛風」には罹る。それも、よく考えてみるといつも今頃、年末に「痛風」に罹るのである。

 「痛風」は夜に発症する。必ずといって良いほど夜中に痛くなる。おそらく寝ていて水分が足りなくなるから身体の中で一番体温の低い左足の親指の付け根が痛くなる。11月の22日の夜中に「あれ?おかしいな?」と思うほどのチリチリした痛みが出てきた。頭の中をよぎったのは「25日の講演会が出来なくなると困る!」ことだった。ほんとに痛くなると高熱よりも悪い、靴も履けなくなるから歩けない、とても人前には出ることが出来なくなくなるのである。翌日からは、水分を中心にしてカロリーをほとんど摂らずに講演会を無事に終わらせることが出来た。それでも、今思うと悪かったのは講演会の後の懇親会、アルコールを飲めないからといってウーロン茶を飲んだのも悪かった。カフェイン過多は脱水症状になる。悪いことが続くといえば、会議の後の翌日の昼飯にはうなぎまで出てきた。外食は悪いほうへと向かっていく、その後の友人との夜の懇親会もキャンセル、アルコールを一滴も飲まない懇親会は失礼だと思って断った。そのまた翌々日が今度は大人数の宴会、水だけを頼むとなんか悪いような気にもなってこれもまたウーロン茶、「痛風」にとってはどんどん悪いほうに向かっていく。この頃から痛みがひどくなりだした。

 ひどい痛みを引きずって、よせばいいのにその後、マッスルミュージカル・ジャングルを見に行った。駐車場も近くに止められないから痛い足を引きずりながらようやく会場まで辿り着いた。発売と同時に電話をかけ続けてやっと手に入れた7000円のチケットだから見に行かないわけにはいかない。架空の太鼓をたたくタップダンスを見て、23段の跳び箱を跳ねている姿を見ているだけで足の痛みがもっとひどくなる。一緒にタップダンスをしているわけでもないのに痛いような気になってくる。それでも、翌朝は「それほど痛くないなあ」と安心しながら、しばらくぶりに風呂に入る。風呂は血行が良くなるが、脱水になりやすい。ひどい「痛風」持ちの人はサウナに入っただけで発症するという。風呂に入った後、気になっていた新聞原稿の取材も出来そうだと思って出かける。後回しに出来ない気持ちが先立って出かけた。足の調子は昨日と違ってかなりいい。2つの建築を見て回った。ひとつは遊歩道をしばらく歩かなければ辿り着けない。歩き出してみると何とか行けそうな気になってきた。登りだしたのが木製の階段600段、汗ばみながらもスイスイ登れる、「ようやく治りだしたなあ!」と感激しながら思ったのは、チリチリした痛みが発症してからもう10日も経っていた。ところが、その日の夜から今度は本格的な激痛が襲ってきた。やはり、「痛風」は関節炎、関節を刺激すれば痛みは増していくのである。

 結局はチリチリした痛みから本格的な痛みまでのひととおりのコースを辿って、ようやく二週間が経って「痛風」の炎症が治まった。最後は眠れなくなったから辛かった。真夜中過ぎの痛みが一番ひどい。「痛風」は繰り返せば繰り返すほど悪くなっていく。膝の炎症にまで上がってきて、最後には腎臓がやられるという。「痛風」でやられた腎臓はすべてにおいてサイレントだから困る。気づいた時は手遅れになる。水分と有酸素運動が大事、後は過食とアルコールの過飲が悪い。原因は分かっているのに発症する。健康食なのに発症する。それもいつも年末、よくよく考えてみればストレスが一番悪いと気づきだす。年末には毎年どうしようもない不安感でストレスがたまっていく。ストレスがたまれば自己逃避のアルコールの過飲とあっという間の早食い食べ過ぎ状態になる。地方の中小企業経営者の悩みは暮れに強くやってくる。良くなかった一年間の不安感がそうさせる。日本野球の星野仙一監督のストレスの凄さもテレビで放映されていた。医師同伴でこの間の試合を戦ったという。ストレスで血がドロドロになるのを防ぐための点滴を毎日打ちながら戦った。心の痛みは、風が吹いても痛い「痛風」の痛みより深く、痛い。中小企業経営者の年末、「痛い年末」からは当分逃れられそうもないのである。


                                          (青柳 剛)

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