□ 年収が高いと満足度も上がる?                                                              平成20年2月18日


 毎年12月の半ばぐらいから一年の締めくくり、一年の重大ニュースがマスコミの話題となる。改めてどの出来事もその当時を思い起こし、納得しながら一年を振り返ることになる。一年を通して浮き彫りになったのが、食品の偽装表示だった。通称「内部告発者保護法」が平成16年に成立したこともあるが、それにしても北から南まで日本中が偽装表示で溢れていたことに驚かされた。政治の話題は、安倍総理の突然の辞任表明がなんと言ってもトップに来る。群馬の人にとってはその後の「群馬から4人目の総理」、福田康夫総理大臣誕生は、それこそビッグニュースだった。景気は原油の高騰、株価の下落と暗雲が立ち込め、そして格差、企業・業種間の格差が明確になってきた。そんな中でもドメスティック企業の落ち込みが激しい。国内需要だけに頼っている産業は、今後も上向きそうもない状況の一年だった。

 いろいろなジャンルの重大ニュースだったが、その中でも面白いデータが載っていた。2007年12月26日に発表された「時給・年収・満足度ランキング2007」である。「高年収=満足度大」の方程式に着眼しながら分析をしているから面白い。1000人の民間企業に勤めるビジネスパーソンに対するアンケート結果である。時給・年収を業種別、9業種に分けている。最も高かったのがIT・通信分野、時給1842円、年収454万円の平均になっている。その次がメーカーから金融・保険、商社などと続き、9業種のなかでも最下位の時給・年収業種は不動産・建築・建設で締めくくられている。アンケートの中身が明確になっていない、会社の規模、対象者の役職、休日、勤務時間などによって結果は少しずつ変わってきそうだが、おそらくそんなに的は外れていない、誰もが予想できる去年一年を反映した結果である。

 次に「時給・年収」を頭に入れながら「満足度ランキング」を見ていると面白い。「満足度ランキング」のトップに来たのが「時給・年収」で3位だった金融・保険、その次が「時給・年収」でトップだったIT・通信分野と続き、最下位がコンサルティングとなっている。ここで特に注目しなければならないのが、「時給・年収」で最下位だった不動産・建築・建設がメーカーと並んで3位に入っていることである。「高年収=満足度大」の方程式が当てはまらない。それよりも、まあまあの年収の業種であっても満足度になれば下がっていってしまう。コンサルティング業界がその典型であり、逆に形に残す「ものつくり」の代表ともいえる建築・建設業種は年収でビリでも「満足度」と言うか「やりがい」の点で上位に上がってくることである。

 年末に発表されるいろいろなジャンルの重大ニュースから読み取れるものは多い。あり得ないような首相の辞任劇だったし、良くも悪くも人間関係の中から培われてくる「打たれ強さの欠如」を眼の前で国民は見せられた。偽装表示で日本中が一色との感も拭えなくなってしまった一年だった。そして、大きな重大ニュースの陰に隠れてしまいそうな「時給・年収・満足度ランキング」、やりがいがあってその後についてくるものが高年収という仕組みがが理想的な姿だがなかなかそうはならない。去年の12月に「不況業種」に認定されたドメスティック企業の象徴的な建設産業、そのうち「満足度・やりがい」までもが落ち込みだすと一気に建設産業崩壊へと向かいだすことになりそうだ。

                                          (青柳 剛)

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