□ 「3.11 震災後2年」                                                     平成25年3月25日


 昨年は3月11日に向かって記者会見の準備をしていた。「東日本大震災から一年、災害応急対策力の強化のために」と銘打った提言集の発表を年明けから計画していた。震災後一年が経つときにここ10年間で我々建設業のもうひとつの大きな役割である災害応急対策力がどれだけ変化しているか、いやもう少し言えば、どれだけ業界の体力が弱くなっているかを浮き彫りにし、国民に向かって問いかける動きだった。スリム化どころかそれぞれの企業の筋肉までもが削げ落ちている事実は業界の内側にいて肌で感じる感覚なのだが、業界側から具体的に生のデータが発信されることは今まで殆んどなかった。しかも10年という時間軸まで考えた調査はあまり見たことがない、どのデータも建設投資の減少と共に業者数が減ってしまったという外形上の一断面調査に終始してきたということであろう。

 建設業協会員全社に2月の始めにアンケート調査を依頼した。アンケート調査で気にしなければならない事といえば何といっても回収率というか回答率の向上、折角の調査が少ないサンプル数になってしまっては何にもならない。特に今回は時間軸を踏まえた数量を把握する調査だからここが一番肝心なところなのであり、そのためには配布方法の工夫と調査の趣旨をきちんと理解してもらうことが大事だ。毎回行っている12支部経由の調査依頼はこう言った時に一層効果を発揮する、その他にいつも気にしていることだが、調査票に書き込んでいて楽しくなければならない、「書き込む人の思いのたけ」が結果として表れ、何かが変わりそうな気がすればどんどん書き込んでくれる。最後まで到達しそうもない、書き手が退屈そのものになってしまう国勢調査のようになっては失敗する。要は団体も個別の企業組織そのものの動かし方もスピーチの仕方・文章の書き方も、建築の設計もそうだが、「むずかしいことをやさしく・やさしいことをより深く・深いことを楽しく」といつも言い続けている考えが基本となっているかどうかにかかっているのである。

 348社中317社の回答、率にすれば91%という高い回答率だった。従業員数は10年前が8838人、調査時点の2月が7209人と18.4%の減少だった。災害時に対応可能な基礎人員は、自社・協力会社含めた作業員のことだが、24.8%の減少となっていたし、建設機械の所有状況は20.7%と少なくなっていた。この数字をどう見るかだが、「建設投資の量が10年前に比較して半分以下になっているのに減り方が少ない」と判断すると間違える。10年の間に調査できる企業そのものが何社も消えてなくなっているのである。こちらはすべての災害対応能力がゼロになってしまった。ちなみに建設業協会員は10年で100社近くいなくなった。この割合を調査結果に乗じてみれば減額となった建設投資の量の割合とそのままの同じ率の数字が表れてくる。結果は、筋肉が落ちて骨と皮ばかりになっている業界の現実、想像していた通りになったが、裏付けのある生のデータをこうして手持ちにしている意義は大きい。

 3月9日に建設業協会の正副会長全員と事務局一体になって県庁記者クラブで記者会見を行った。震災1年後だからマスコミの関心も高い、専門紙はもちろん一般紙も多くの記者が参加し、記事として取り上げられた。提言集は調査結果に基づき、「大規模災害時における出動要請の調整」「災害対策車両の優先通行、優先給油」「社会資本の強靭化」「非常時の通信手段、燃料の確保」「地域における災害応急対策力の維持」の発注者に対する5つの提言と建設業の仲間に対して「建設業の役割」「災害応急対策力の向上」「技術力の維持・向上」の3つの提言を行った。各地の建設業協会はもちろん全国各地の行政機関にもできるだけ多く配布した。手作りの地道な作業だったかもしれないが、じわじわとした反響は今でも聞こえてくる。あれから1年、このデータと提言集はいろいろな機会で使うことが出来た。どこで話しても説得力のある材料を持っていることは強みになる。「3・11震災後2年」が経つ、「遅々として進まない復興」・「これからようやく本格復興」・「技術者、作業員不足」・「資材高騰、生コンが足りない」・「不調不落対策」・「利益の出ない業界」・「ロットの大型化」などなど、近県の業界の眼で見ていて浮き彫りになることは多い、それこそ、ものづくり産業として提言しなければならないことが眼の前に山のように立ちはだかっている。(群馬建設新聞 3.12)


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